町場ブログ左官屋日和

2017上半期・塗り壁セレクション

早いもので本年も半分が過ぎようとしています。これからは暑い夏に入っていき、猛暑とゲリラ豪雨との戦い、熱中症対策が大切な季節になってきます。この間もさまざまな現場に出入りさせていただきました。
珪藻土のMPパウダーを使った現場はワンちゃんがとても元気なところでした。漆喰のカルクウォールの現場では、ご家族5人の手形を残されました。さりげない場所に残したいということでロフトへ上がった階段のつきあたりの壁になりました。赤ちゃんと奥さまがちょっと大変な思いをされましたがそれも含めて微笑ましいイベントになりました。大工さんと塗装屋さんとタイル屋さんと皆が一緒になる日があるという稀な現場で、冗談を言い合っているうちに大工さんが本気で怒りはじめて帰ってしまったエピソードも、今では楽しい思い出です。
おかげさまで、そんなこんなでつづいている左官日和、今回は外壁の塗り替えのご紹介です。
もともとこの現場のお隣のお宅の外壁塗装をされた会社さまが元請けで、ご近所さまへの挨拶のときなど、会話の流れの中で話が弾んだのか、ぜひともやろうじゃないかということになったそうです。既存の外壁は漆喰で、南フランスの自然が豊かな地方にたたずむお家を彷彿とさせるようなイメージの、手づくりの温もりを感じさせる、童話の世界のようなお宅です。ただ、経年による細かなひびや、汚れ、ところどころ剥離がみられたりして、それを、塗り壁ならではの味わいととらえるかどうかが価値観のわかれ目になる状態でした。

施工前1

施工前2

施工前3

個人的には経年変化が地層になってあらわれているような表情が味わいに見えましたので、あきらかな劣化部分を直した上で、エイジングなど造形的な仕上げを目指しても良いのではないかと思ったりもしました。が、お施主さまはそうした味わいよりもシンプルに綺麗さを求められていたので、そんな心の声は胸のうちにしまっておきました。
ならば、漆喰の上に薄く塗れるような塗装を選んでも良いのではと会社さんに話してみたところ、お施主さまが漆喰にこだわられているということでした。左官屋にとってはありがたい話です。しかし、漆喰の上に漆喰というのは案外なかなかの仕事です。
下地の状況にもよりますし、基本的に漆喰の上にまた漆喰を塗るのはおいそれとは無理というのが主流でした。なので塗装屋さんもそう簡単にはやりません。とはいいつつも漆喰で仕上がっていた室内が、あっさりとペンキで塗りかえてあったりするケースに出会うことも珍しくありませんので、定跡と現実のズレというのもよくあることではあります。
それに、古い常識が乗り越えられることもまた歴史上の常識とも言えます。材料メーカーも色々と開発していて、漆喰の上にローラーで塗れる「漆喰塗料」などもあるようです。それなども良いのではないかと話題にしてみましたが、あまり反応はありませんでした。それに既存の漆喰は黄土を混ぜたような微妙なベージュで、調べた漆喰塗料には白しかないようでした。
最初に建てられたときの情報がちょっとでもあると便利なのですが、残念ながら残されていませんでした。たまたま以前に施工したことのあるタイプにそっくりの仕上げだったのでおおよその見当はつくのですが、色出しが黄土と思い込んでいたら、意外に違いそうな感じで、ひょっとしたら京錆土のような・・。そうなると金額も変わって来てしまう。是非確認してみたかったのですが、かなり遠方の左官屋さんだったようで、今回弊社に話がまわってきたのもそれが要因の一つだったようでしたから、あとは観察と調査と想像力で補うしかありません。このような状況になると、『この建物を救えるのは自分しかいない』というような、強迫観念にも似た使命感に駆られてきます。
色に関しては経年による変化、それも場所による差違もあり、一概には決められず、また、色漆喰にありがちな、施工状況による色の出方の変化というものを考えてみても黄土と断定するのは危険そうであることに思い至りました。足場がかかって、下処理しながら各所を観察していけばいくほど発見があるので、臨機応変に方法を変化させることも必要だったりします。
最終的にマインの山吹と焦茶を使い、ブレンドの度合いで差をつけてサンプルを作り、選んでいただくことにしました。単色であれば比較的楽でしたが、だいたいブレンドが選ばれます。その色がより既存と要望に近い以上は無理もありません。
しかし、漆喰を塗る前にまずは下地をしっかりさせなければなりません。ヘアークラックという細いひびならそのまま塗って下地の補強と上塗りの漆喰との密着を良くできるという日本プラスターのNPαという材料を全面に塗りました。
笠木にレンガを使ったベランダの壁のところの劣化はちょっと激しく、ほとんど漆喰が剥がれてしまっている状態でした。

施工前4
施工前5
施工前6
施工前7

1階部分でも雨あたりの激しかったところなのか、北東のあたりの水切り近辺で、レンガととりあっているあたりに同じような劣化が見られました。そうしたところはとにかく剥げるところは剥いで、浸透性のプライマーで下地を補強して、NPαに珪砂を混ぜて厚く段差を補正できるようにして塗っておきます。その後、NPαを全面にしごき塗りしていきます。
ご近所さまも気さくにお話ししてくれる方が多かったのですが、NPαが真っ白な材料なのでそのしごき塗りが終わった段階で『キレイですねー』とお声がけいただいたりして、本塗りはこれからですー、などと応じると『ももう一回塗るんですか!』と驚かれていました。この現場に限らず、左官屋の仕事ははたから見ているとかなり手間をかけているように見えるらしく、驚かれることが多々あります。一般のお客様は仕上がった状態をご覧になっているので、仕上がってからは目に見えない、下地での仕事の重要性を知るととても新鮮なのだそうです。
仕上げ塗りの前には漆喰用のシーラーを塗って乾かし、仕上げ塗りする直前にもう一度塗ることにしました。外部は乾きも早いので念には念を入れてです。周辺は自然が豊かで、風通しも良いので、案の定、乾きが早かったのでその判断は正しかったようです。自然には逆らえません。
その逆らえない自然の力にはもう一つ雨という強力な勢力があります。この現場は天気が変わりやすい場所だったのか、予報に反して雨が降ったり、風も暴風と言っても良いくらいの日があったり、なかなか凄いものでした。
あまりにも凄まじいので、足場には防音、防塵などのためのネットが張り巡らされているのですが、それだけでは足りずに防風のための養生、まだゲリラ豪雨の時期ではありませんでしたが、それでも急な雨のための養生など、養生に次ぐ養生です。そして、最初に塗った左官屋さん達の奮闘ぶりも頭に浮かぶのでした。遠方から来て、下地のモルタルからとなるとさらに相当な労力なはずで、今回のように既存の仕上げから想像できることも少なかったはずで、初回となるとさらに意表をつくトラブルもあったはずなのです。
とはいえ、2回目は2回目で初回にはない大変な面はあります。一度仕上がった建物には様々な器具が付いており、配管なども走り、プロパンガスのタンクが設置されていたり、外構も完成しており、新築現場と違って汚せるところはゼロです。養生の気の使い方は相当なもので、材料を捏ねる場所にも気を使います。今回はテントを張り、四方をブルーシートで囲み、万が一の雨風を凌ぐと同時に、近隣の方々へ粉塵が飛ばされないようにしました。さながらキャンプです。出張先で宿泊施設なども遠いお施主さんのお宅の場合、庭先にプレハブを建ててしばらく住み込む大工さんがいらっしゃったりすることがありますが、今回も外見からしたら住んでいるかのような風情だったかもしれません。
漆喰は練りおきする必要もあるので前もってそのベースキャンプでひたすら材料練りです。1日でいけるかと思ったのですが、色粉の段取りもあったので2日かかってしまいました。でも、そうすることで塗りやすい漆喰が生まれるのです。
ところで、この現場の近所には陶芸教室があって、一服のときにおじゃまする時がありました。とても雰囲気の良いところで、作品を拝見したり窯場なども見せていただきました。陶芸の先生も、モノづくりが好きということでちょいちょい気にしてくれていたようで、材料の仕込みなど、共通するところがありますねえなどといった話をしながらカフェオレをご馳走になりました。合間合間に入れてくださったこの陶芸の先生の合いの手は本当に絶妙で楽しいものでした。
お施主さまにも暑いときにはスポーツドリンク、肌寒いときには暖かい飲み物、自分の娘の話になった後にはお菓子をお土産に、時にはビールをお土産に・・・と、本当にお世話になりました。ますます力が入るというもので、全力で事に当たらせていただきました(もちろん常に全力ですが!)。仕上がりにもご満足いただけて本当に良かったです。

施工後1
施工後2
施工後4

その後、しばらくして元請けの会社さまから連絡が入りました。ごぶさたしておりますー、ひょっとして他にもお仕事だったりしますか・・などと話していたら驚きの内容でした。この建物の前面には車をとめるスペースがあるのですが、そこにスタンプコンクリートのような意匠を施す塗装屋さんの仕事が残されていました。なんとその際に壁を汚してしまったというのです。

施工後5
施工後6

あまりのことにさすがに最初は声も出ませんでしたが、この現場の自然の力、風の強さなどは肌身に感じていたので、アクシデントの内容ははまざまざと想像がつきました。
しかし、漆喰を部分補修できないのはわりとよく知られた話です。しかも色を使っていますからなおのことです。
トラブルの状況は写真ではなかなかわからなかったので、現場の帰りに直接見に行ってみると、塗装の吹き付けが風であおられて細かく飛び散っていました。仕上がりを気に入られていたお施主さんもさぞ落ち込んでいることと思ったら案外そうでもなく、しかし、その理由がすんなり元どおりになると思っているからだと知ると、気が気ではありません。もとにはもどらないのです。絶対に補修箇所はわかってしまいます。手づくりの風合いの、ラフな仕上げなため、違和感を無くす工夫の余地は確かにあるのですが、完全にはなくなりません。
汚れが落ちれば一番良いので洗浄を試してみましたが、さすがに無理でした。塗装屋さんもその場で落とそうとトライした跡が、逆にトラブルの大きさを物語っています。
考えに考えました。せっかく喜んでいただいた仕上げを、台無しにして終わることがあってはなりません。かといって足場を立てて一面塗り直すという事態も求められていません。かといって妥協の産物にもしたくありません。
飛び散った点を細かく塗るということは無理なので、飛び散ったエリアを広く塗るしかありません。水切りから100、120センチくらいの高さまで広く塗料が散っているので、そのエリアは端から端まで塗ります。問題は継ぎ目をどうするかです。不定形にぼかしてくれればというのがリクエスト内容ですが、「ぼかして」というのがくせ者で、その度合いが人によって千差万別と言っても良いくらいです。一般的にはほぼゼロになると思われていて、現実にはゼロにはなりません。どれだけ説明しても蓋を開けたらあれっ・・こんなはずでは・・となることが少なくありません。
考えているうちに、この建物のデザインには、部分的にレンガが配してあったり、正面から件の壁の途中まで、それから裏の勝手口までは、見切るように板が巻かれています。そして、その見切りの下側にはレンガが密に積まれていたり、まばらに貼ってあったりします。そこにはストーリーがみて取れます。まばらに貼ってある、とも言えますが、密に積んであったレンガが朽ちていき、その部分を漆喰で補修したようにも見えるのです。それを延長して考えてみました。件の壁面も補修で塗る高さはほぼその見切りと同じ高さで通すことが出来そうです。補修のラインが残るのなら、積極的に残して、補修にみせずに意匠にみせる選択肢もあるのではないかと思ったのです。元請け会社さんにもお話しするとご理解いただけました。しかし、お施主さんがどちらを好むかはわかりませんので、現場でお選びいただくことにしました。実際に塗った場合に不定形に極力ぼかすといってもどの程度になるのかを見ていただき、後日また仕上げることにしました。
中1日をあけて、やはりラインを出し、意匠的にあえて差を出そうという方針になりました。レンガを覆うように塗ったかのような凹凸も増やして、補修したというような見え方をしないように。かといってあまりにもやり過ぎるのもよくないのでそのあたりは控えめに。写真のような感じになりました。
これで、いろいろありましたが一件落着です。みなさんに送り出されたときには本当に長丁場の現場で思い出深く、一生忘れないだろうなとちょっとセンチメンタルな気分になりました。

施工後7

数日後、見知らぬ番号から着信がありました。誰かと思えばお施主さんです。なにかと思えば、やっぱりラインが気になると・・!?。そうなのです。どんなにお話しをしても、結果、本当にどのように感じられるかはわからないのです。実際に目にするとやはり・・ということもあるのです。
そこまでご希望されるならというわけでもう一度、極力、不定形にぼかす仕上げをしに行きました。かなり神経を使って、ぼかす際の形態やぼかし方には相当こだわりましたが、やはり多少は差が出て見えます。しかし、翌日ご覧になったお施主さまも、十分許容範囲とおっしゃって下さり、今度こそ完工となりました。
本当に思い出深い現場になりました。ありがとうございました。また近くの現場のときには立ち寄らせていただこうかと思っております。よろしくお願いいたします。

施工後8
施工後9
施工後10
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2017年06月05日 町場

古壁はがし

和室をリフォームする際に、京壁を塗り直したり、珪藻土に塗り替えたり、漆喰にしたり、お施主さまのお好みにあわせていろいろな模様替えの機会をいただきます。経年変化による味わいが凝縮されたような和室の渋みも良いですが、塗り替えた後の新しい空気感もまた良いものです。

そうした仕上げの材料を塗る際に、既存の古い壁は、劣化が著しいときには剥がしていきます。若干手間がかかりますが、仕上げをしっかりと美しくするためには必要な工程です。そのまま塗ってしまうと、劣化した壁と一緒に剥がれてしまったりするからです。
剥がす際には古壁にたっぷりと水分を染み込ませて柔らかくすれば京壁などの場合はすぐに剥がれます。漆喰の場合はバラバラと硬いままめくっていく感じです。剥がした後にアクを止めるためのシーラーを塗ります。この工程も端折らないほうが無難なのです。せっかく仕上げた塗り壁に、底の方から赤っぽい染みが出てくるのはかなり残念な光景です。そうした下地の処理をしていくことで、現場と対話がスタートします。

味わいのある和室には、綺麗に手入れをされていてもゆっくりと歴史を重ねた表情が蓄積されています。古壁の表情、柱の細かなきず、なげしの中には何かの拍子で潜り込んでしまったスーパーボールや、宝物のようにひっそりと置いてある不思議な物体など、みていてほっこりするものがあったりします。今回もそんな出会いがありました。
よく出来た生き物のオモチャが隅の方に佇んでいたのです。海洋堂の食玩は本当によく出来ているなと感心してしまいます。お施主さんの息子さんか、はたまた娘さんか、まだ小さいときにきっと隠したものなのなのだろう、お施主さんも懐かしがるかもしれないと思って手に取ろうとしたら驚いたことに動きまでリアルに再現されています。どういう作りになっているんだろう・・・って本物だこりゃ。

やもり

家の中に住むヤモリやトカゲはその家を守っているという話がよぎりました。お施主さんにお伝えしようかとも思いましたが、人によってはヤモリやトカゲを苦手にする場合もあります。
しかも、初対面の左官屋がご挨拶とともにヤモリを携えている光景はなかなかショッキングな可能性もあります。コンマ2秒の間にそんなことを思いつつヤモリの元気がないことに気がつきました。尻尾が切れたままだし、明らかにらに弱っている感じでした。心なしか表情も朦朧としているようです。現場に置き去りも危ないし、これは外に逃がしてあげたほうが良さそうだと思い、直射日光のあたらない、適度に湿気もありそうな庭の草むらに避難してもらいました。一度ふりかえって確認したときに、避難させた直後の格好で逆さまになったヤモリのシルエットが、葉っぱを透かしてそのままになっていたので、気になって様子を見ようかと後ろ髪を引かれましたが、そっとしておきました。
仕事がひと段落ついてもう一度そのあたりを見たときにはもう姿も見えなかったので一安心。リフォーム工事が無事に完了したら、きっと元気な姿でまた戻ってきてくれるに違いありません。

ヤモリ_アップ

お天気の良い日差しの中でのリフォーム工事中のひとコマでした。

2017年05月25日 町場

塗りおさめ、塗り初め。

年末年始はエコクイーンという珪藻土の現場と、珪藻土と漆喰の良いところを取り入れ改良しているパーシモンウォールという現代の塗り壁の現場が続きました。

珪藻土の現場は、400平米を越す物件で塗りごたえ十分。吹き抜けもあり迫力も十分で、光と陰影という塗り壁ならではの美しさも豪快に堪能できます。自然素材ならではの空気感にお施主さまも現場にいらっしゃったおりに『良~い、香り。塗り壁にして良かった』と自然に声に出されていました。

今回はスタイロフォームという発泡スチロールのような材質の道具で表面を荒らす仕上げでした。搔き落としのような、軽石の表面のような、一見無地に見えて、実はさりげない風合いが見えてくる・・というような仕上がりです。
もともと全面がビニールクロスだったものが塗り壁に変身したので、相当ドラマチックな展開だったと思います。見栄えもそうですが、空気がまったく違うという、目に見えない変化がこれから続いていくと思うと本当に嬉しくなります。
細かい梁、奥まった作り・・どうやって塗ろう・・というディティールも満載でした。もちろん見えないところまで。ものすごい態勢、時には利き腕の反対の腕で塗るしかなかったり・・そうした細部への執念は、きっと生きている・・と信じております。

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パーシモンウォールは、ひとくちに珪藻土や漆喰といえるような材料ではなく、それらの良いところを取り、改良を重ねている、古来の塗り壁というよりは現代の塗り壁材のひとつです。あらかじめ撹拌されたものがペール缶というプラスチックのバケツに入れられたものが主流で、仲間うちでは、粉を水と混ぜて現場で練るエコクイーンのような材料に対して、ペーストものと呼んだりして親しんでいます。

パーシモンウォールの現場は、お施主さまとパターンの塩梅を決めるのにワイワイ話しながら進めました。最初はクールにシンプルにと聞いていたのでそんな感じを目指したところ『これではシンプルすぎるー。っていうか何にもない、むしろこんなにシンプルに出来るのね。でももうちょっと表情が欲しいかも。』となり微調整していき、最終的には霧の中に微妙に音が流れ、そよ風が吹いている・・というような仕上がりになりました。
その音の強弱は、『この壁は強くても良いよー』とか『この部屋はもっと』というようなリクエストに対応する形で決まっていき、1階から2階、3階と登りつめていく建物全体でドラマチックな交響曲のようになった気がします。
そうした表情は、時間帯による光の変化、陰影の変化によって現れたり消えたりするような感じです。塗り壁のパターンは、最初に決めて一気に行くことが多く、それも良いのですが、場所ごとに感覚的にリクエストにお応えするというのも塗り壁ならではのダイナミックな変化があって面白く、実践させていただけて幸運でした。
そして玄関入ってすぐの面が施工の最後の一面になったのですが、お施主さまご夫婦とお嬢さまもご一緒にワイワイ塗り壁体験、手形とりなどをして、味わいの違う壁に仕上げました。記念にタイルを貼ったところにノリで絵を描いてとのリクエストにも僭越ながらお答えを。奥様のお好きなフクロウです。フクロウの顔にパターンが体のようにつながっている!というのは奥様の発見です。写真はその一角です。

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パーシモンウォールの現場からはもう一つ。通常は練られた材料がペール缶で出荷されるのですが、この現場はちょっと特殊で、粉体から使用しました。というのはお施主さんのご希望で、通常薄く仕上げるところをやや厚めに塗って、滑らかな凹凸がある手作業の温もりと味わいを強調した仕上げをご希望されたからです。仲間うちでは「漆喰モコモコ仕上げ」と呼んで親しんでいる表情です。
この仕上げは、角も不規則に丸みをおびて仕上がるので、塗り壁は普通に塗ってもそうですが、なおのこと柔らかな空気感を醸し出されます。
工場であらかじめ練られていると硬さなどの調整に限度があるので粉体から練ることになったのでした。通常よりも厚くするので割れどめの繊維を混ぜたり、メーカーさん独自の、塗り壁の機能を向上させるための物質を混ぜたり、調整もしやすく、発見も多く、勉強になりました。そのぶん正月にサンプル作りという風流な「塗り初め」みたいにもなりましたが。

調整などにメリットがあるぶん、仕上げには手間がかかります。第一に計量しながら練るのもそうですが、一回塗って終わりにはならず、塗りつけてからさらに微妙に手を加えなくてはなりません。そのぶん、仕上がってからの満足感も上のせされるわけですが。
この現場も、サンプルは作ったものの、実際に施工していく過程で『いやもうちょっと』『もっともっと』と調整したので、仕上がったときにはお施主さまにもご満足いただけました。さらに、寝室はご自分でローラーで仕上げるのでその下地まで、ウォークインクローゼットはご自分で鏝塗りするのでその手助けを、というリクエストもありました。そうしたDIYは、途中で挫折する方も多いのですが、幾多の山を越えて仕上げられました。
下地処理の段階でやや後悔の色もチラホラお見受けしました。仕上がってしまうとわかりませんが、実は下地処理もとても大変なのです。

特にマンションのリフォーム・リノベーションの場合、方法論にもよりますが、一部クロスを除去、一部はコンクリートの躯体、一部は石膏ボード、といった混合の下地になる場合もあり、仕上げるためにはアクを止めるためのシーラーというものを塗ったり、ボードとボードやボードと木の板、などの接合部を割れないようにメッシュテープというものを貼ってパテをして・・などなど。それでも見事に乗り越えられました。
しかも、ご自身のお仕事をされながらだったので驚きです。現場にパソコンを持ち込まれ、デスクワークと施工の平行作業。ちなみに女性の方です。すごい根性です。

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昔、直面や直線、直角を排した物件、という実験的なお部屋を拝見したことがあります。箱型の空間というよりは繭のような空間です。そのときの壁の材質はわからないのですが、そうした空間を仕上げるのにこのモコモコ仕上げはとても良いのでいつかやってみたいものです。実際にモコモコ仕上げの現場で、一部はそうした三次曲面で造形したような空間を施工したことがありますが、全体というのはなかなかありません。先の実験的なお部屋も、その後他に展開したという話を聞きませんので、なかなか難しいのかもしれません。配置する家具など、実用の面で色々な問題もありそうなのでやむを得ないところかもしれません。

今年もさらに面白く塗り壁を仕上げて行きたいと思っておりますのでぜひぜひよろしくお願いいたします。こうした町場の塗り壁仕事もどんどん展開していきますので、ご興味のある方は今後ともご連絡いただければ幸いです。タイミングによってはお待ちいただく場合もありますが、合い次第すぐに連絡いたしますので懲りずによろしくお願いいたします!

2017年01月28日 町場

補修って何?

ちょっとした補修・・って何でしょう。

まずは身の回りをご覧になって下さい。何か気になるところはありませんでしょうか。
お花が枯れてきたわね?そろそろお花屋さんにいかれると良いと思います。
そろそろ暖房が・・?お近くの電機屋さんですね。
外はいかがでしょうか。じゃあちょっとサンダルを履いて・・あら、このサンダルも年季が入ってきたかも?靴屋さんで良いかと思います。
あ、玄関の土間がひび割れていて・・?!ビンゴ!それは左官屋さんに相談しましょう。
さあ、まだあるかもしれません。外に行ってみましょうか。花壇が寂しくなってきた?ホームセンターか、神代植物園のそばに良いグリーンショップがありますよ。
花壇の背景のブロック塀が汚れてるかしらね?・・ビンゴ!!その壁をどうしたいですか。綺麗に掃除できれば良いわね?あら、それは掃除屋さんか便利屋さんにお電話ですね。あるいはご自分の範疇かと・・ちょっと色を変えたい?・・惜しいですね。色だけだとペンキ屋さんに電話か、もしくはホームセンターでご自分でペンキを買って塗る手もありですね。でもブロックに直接だと結構アレですよ。ブロック塀っぽくない壁になんてなるのかしら?・・ビンゴ!!!そうなってくると左官屋の出番ですよ~。下地を直したりしないといけませんからね。
え、それからちょっと家の裏の細いところ?そこは犬走りっていうんですよ、どうかしましたか?なんで犬走りっていうのか?・・犬が遊んで走るのに程よい幅だからですかね・・犬走りの土間が割れている?・ビンゴ!それも左官屋ですね。

という感じで、壁、床、土間の割れや穴埋め、模様替え、などで気になるところがあったらお直しできますという話です。

気になるお値段ですが、通常、補修工事の場合、1日で終わるか、半日で終わるかという単位になってきます。半半日というのはちょっときついですね。チョットした穴埋めなら1000円くらいでしょ?と仰られる方はぜひホームセンターに行き、材料と道具を揃えて試してみることを考えてみて下さい。時間と手間って結構すぐかかってしまうんですよね。

半日なら1万円+材料、1日なら2万円+材料、がベースになります。

ですので、ちょっとした穴の直しでそれはねーという奥さん。無理もありません。
その場合、例えばご近所さんで同じように直したいけど高くつくのはもったいないレベルの補修を、なんだかKSナントカっていうところが直してれるらしいから一緒にどう?ワリカンで、あらそれならうちも、なんていうようにみなさまでご注文されればまあまあ妥当な線でできるかもしれませんよ。
本当にちょっとした補修なら10件くらいは出来たりするかもしれませんからそうなれば夢の2千円コースです。
ナントカ技建なら良いかもしれないななんてご主人もおっしゃるかもしれませんよ。

ちなみに技建は技研ではありませんのでお間違えなく。弊社の社長、案外気にしてます。
でも確かに井介を胃介とか胃貝とか異界とか位階とか限界とかいわれたらだんだん誰なのかわからなくなってきますよね。
よろしくお願いいたします。

閑話休題。ものは考えよう使いよう試してみようです。もちろん、ちょっとした工事をきっかけにして、奥さん、この家、地震が来たら大変なことになりますよとか言って大規模リフォームにしようとかそうした人の不安につけこんだ詐欺まがいのことはいたしません。
左官の神様に誓って申し上げます。それほど暇でもありません。

お施主さまからたってのご相談という場合をのぞいて弊社がご注文いただいた以上のことを無理にお勧めすることはありません
ここは重要なところなので強調いたします。
逆に、ご注文以上のことを過剰にその場でリクエストされましてもお断りしなくてはならない場合もあります。意外とついでにあれもこれもあそこもここも・・とかってなること、あるんです。いやもうそろそろ・・いやまだ日が高いじゃないか、ついでに頼むよキミィとか。サービスにも限界があるんじゃないですかねえって時が。
その場合は井介限界と唱えて帰りますので悪しからずお願いいたします。

それでもご興味ございましたらご一報ください。決して損は、なさいません!

2016年11月18日 町場

現場にて1

「すてきな壁に仕上げてくれてありがとう」そんなストレートな一言をいただけると素直にうれしいものです。

そんな一声をいただいたお施主さんは、塗装に関してはご自分でやられるなど、施工に関してとても興味をもたれて、よくご覧になっていました。塗りのパターンの確認をしながら色々なお話しをしているうちに、お施主さんが関西の美大の通信教育を受け、空間系のお仕事の勉強をしているとおっしゃいました。たまたま僕がそちらの道にも進んでいたので四方山話に花が咲きました。しかも、その関西の学校には僕も昔お世話になった方が教員をしていたりするのでなおさらでした。昔の仲間が関西に単身向かって長屋のようなところにアトリエを構えてたとか、忘れていた懐かしい話も思い出し、ついついそんな話もさせていただきました。

お施主さんがたまたま伊豆長八美術館に行った話もされて。実はその美術館で毎年開催されている鏝絵コンクールに2年つづけて出品し、昨年入賞、今年は佳作をいただいていたのでした。長八美術館というのは鏝絵で有名な長八さんを紹介しているところで、建物自体も左官工事の粋を集めたような見応えあるものです。そんな立派な作品とはまだまだまだまだ比べるべくもありませんが、この場を借りてご紹介いたします。お施主さんもご興味いただいていたのでご覧になっていただければ幸いです。

授業はなかなか簡単にはいかず大変なご様子でしたが、作りたいイメージはたくさんあるとおっしゃっていたのが印象的です。そつなく授業をこなせることよりそちらの方が余程大事な気がしました。将来いつになるかわかりませんが、コラボなんか出来たら良いですねなどと冗談半分で笑い話しをしつつ、こちらはわりと本気で期待したりしながら現場を後にしました。

ところで、鏝絵なんかやってて結構暇なんじゃないの・・などと思わないで下さい。もちろん現場の合間にコツコツチマチマやっているのです。鏝絵だけに専念できるような巨匠になれれば良いですが、まだまだ左官屋の末席も末席。暇なんてありはしません。

そんな感じで左官屋日和はつづきます。

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2016年11月18日 町場